コラム「ケンカも関わりのうち」
ある日曜日のプレーパークの朝。
先に来た子が久しぶりに会う(学校は違うけど、同学年の)友達を見つけて
「あのさ、おまえさー、」と話し始めると、
「おまえって言うな!」という返事。
雲行きがあやしいぞと思い、様子を見ようと私がそばにいると
相手の子は「お前なんて言うやつとは遊ばない!」と泣きそうな顔をしてつぶやき、その場を離れていった。
その子は「なんだよ!」と怒っていたが、友達のことは追わずに他の子と遊び始めた。
その後、お互いにそれぞれ一日遊んですごし、片付けの時間になる夕方ごろ、小学生を中心にオニごっこが始まった。プレーリーダーも加わり、10人ほどの大人数。
オニが数を数え始めると、森じゅうに子どもたちが逃げていく。
どこかに隠れる場所はないかなと探していると、朝、泣きそうだった彼が草むらの向こうから「おい、きのぴー!」と小さな声と手まねきで呼んできた。
すると、そこには朝「おまえさー、」と言っていた彼も一緒に隠れていたのだった。
「ここにかくれようぜ」と、3人で草むらにしゃがんで隠れる。すると目の前に、草むらにまぎれて不思議な形の葉っぱ(シュロの若葉)を見つけ、
「なんだこれ?」「ジャバラじゃね?」「すげえ、はじめて見た!」と、しばし観察。
すると遠くからオニらしき子の声がしたので、さらに奥の草むらへ3人で移動する。
今度は草むらの裏のフェンス越しに見える広い駐車場を見て、
「見てみろよ、ここならホームラン打てるよな」
「ああ、打ちてえなあ」
と野球の話。
そうこうしているうちに、「オニに見つかった!残念…」と思ったら、オニではなく、
誰かが転んでケガして終わってるらしいと仲間が呼びに来てオニごっこは終わった。
朝の言い合いで険悪な雰囲気だった相手と、まさか最後のオニごっこで一緒に遊ぶということが、1日の中で起こるとは想像していなかった。
そして、一緒に隠れて遊ぶころには、相手の子のことを「おまえ」ではなく、いつものようにニックネームで呼んでいた。
朝、二人はなぜか「おまえ」と言ってしまった気まずさや、本当は共通の野球の話がしたかったこと…モヤモヤした気持ちをかかえながら、お互いにすごしていたのかもしれない。くっついたり離れたりと、子どもの柔軟性には大人が学ばされる。
思えば自分も小学生のころ、寄り道をしたことを指摘され、気まずかった私は「もう絶交でいいもん!」などと乱暴な言い方をしたこともあった。でも、その子とは大人になった今でも親友でいつづけている。
ケンカとか仲直りとか、大人は出来事に名前をつけたがるけれど、子どもにとってはどれもお互いを知っていくためのプロセスで、そうやって関係性をつくっていくんだなぁと感じた。
きのぴー